天青石の欠片

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黄金の月、炎の剣

2007.06.24 短編
月のない夜空を赤く染め上げるかのように、明々と燃え上がる炎。
その炎の中心に、彼女はいた。

生き別れの異母弟を探す旅の途中、七日かけて深い森を抜け、ようやく見晴らしのいい小高い丘に辿り着いた。丘の麓にはぽつぽつと町の明かりが見える。
「ふむ。今夜は熱いお風呂に入れそうだ」
冷たい川の水はもう御免だよ。熱いお風呂と美味しい食事と暖かい布団を目指して歩を進めようとした時、背後から虫の羽音がこちらに向かってくるのが聞こえてきた。
どうやら運悪くモンスターの群れに遭遇してしまったようだ。
闇の中、煩い羽音をたてて現れた巨大な蜂。軽く十はいるだろうか。
「すぐにこの場から立ち去るから、見逃してくれないかな?」
問えば蜂の姿をしたモンスターはその強靱そうな顎をギチギチと鳴らし不快な音を立て始める。
交渉決裂、元よりこいつらはこちらの頼みなど聞く耳を持たない。
今までもモンスターには何度か出くわしその度に切り抜けてきたが、この数を相手にするのは初めてだった。それでも易々と負けて喰われてやるつもりは全くないので、いつものように戦闘態勢に入る。
両腕に金色の光の刃を纏い、溢れた魔力はざわりと音を立てて周りの空気を渦巻く。
「やれやれ。仕方ない。……じゃ、少し遊ぼうか」
モンスターが一斉に喰らいかかる。軽く息を吐いて呼吸を整えモンスターを見据える。ぎりぎりまで引き寄せ、無駄のない動きで素早く刃を振るう。
金の刃によって切り裂かれた巨体が、体液を撒き散らしながら勢い良く地面に転がる。次々と襲い来るモンスターを一体また一体と、踊るように優雅な身のこなしで瞬く間に切り刻んでいく。
そうしてわずかな時間で死骸の山は築かれ、築いた本人はやれやれと顔にかかった体液を拭う。
「すごォい。あっという間だったネェ」
ぱちぱちぱち。乾いた音が暗い空に響く。音のした方に視線を向けると、つい今し方片付けたモンスターと同じ翅と触角を生やしたヒトが頭上を軽やかに飛んでいた。
「おや、キミもモンスターなのかい?ヒト型に出会ったのは初めてだ」
「それは光栄だネ。ボクもボクらのゴハンと違う種族に会ったのはオマエが初めてだヨ」
ヒト型のモンスターはけらけらと笑い声を立てて、まるで品定めでもしているかのようにくるくると周囲を飛び回る。
「お互いハジメマシテだからさぁ、記念にオマエの名前を教えてヨ。ボクはゾッド。女王サマの忠実なシモベさぁ」
「ルチルレイテッドだ。覚えておくがいい。で、キミも僕を見逃してはくれないのかな?」
「あったりまえジャンッ!」
ゾッドはにたぁと笑い、蟲型とは比べものにならない速さで飛び、手に持つ槍を振るう。金の刃はそれを迎え撃ち、衝撃が互いの腕を電流のように伝う。
「オマエはどんな味がするのかナァ?ボクとっても楽しみッ」
「そりゃあ美味に決まっているさ。キミに喰われてやるつもりは更々ないけどね」
何度も攻防を繰り返し互いの頬や腕に大小の傷を作り、金属のぶつかり合う音が空気を震わせる。
互いに渾身の力で放った刃は、ぶつかり合った反動で両者を大きく弾き飛ばした。
ゾッドは空中で器用に回転しながら衝撃を受け流し、実に楽しそうな笑い声をあげる。
「イイねェイイねェ!ゾクゾクするヨ!」
両手を伝う痺れる痛みに自身もニィ、と笑い、体勢を立て直し刃を構える。が、急に視界が眩み、四肢が小刻みに震え始め力が抜けていく感覚に襲われる。
「あっ、忘れてた。ボクらの槍には毒が塗られてるんだァ。その内立っていられなくなるヨ」
「毒か……それはやっかいだな」
振り下ろされたゾッドの槍をギリギリで受け止めるが、思うように腕に力が入らず徐々に押され始めカチカチと刃の擦れる音が鳴る。
「もうカンネンしちゃう?ねぇ、ルチルレイテッド?」
薄笑いを浮かべ槍を持つ手に力を込めるゾッドの顔を霞む視界で捉えながら、負けるつもりなどないと不適に笑う。
「さっきも言ったろう?キミに喰われてやるつもりは更々ないって」
殺気にも似た溢れる魔力の波が長い金糸の髪を揺らし、ゾッドの背筋にぞくりと悪寒が走る。その一瞬ゾッドの力が弱まったのを逃さず金の刃を纏った腕は持てる力でそれを弾き返した。
「……そろそろ終わりにしようか。夜更かしは体に悪いからね」
ばさり。着ていたコートを脱ぎ捨て、邪魔なものがなくなった背から一対の金の翼が生える。両腕の刃は輝きを増し、更に鋭く伸びる。
「そうネ。おなかすいたし。ちょっと名残惜しいケド終わらせなくちゃネ」
金の翼と透き通る翅が同時にはばたき、槍と金の刃が互いの心臓へ向けて放たれる。次に、肉を引き裂く音と貫く感触。
左腕の刃は槍を寸でのところで受けとめ、右腕の長く伸びた刃はゾッドの左胸を貫いていた。
「あーあァ。負けちゃったァ。刃が伸びるなんて聞いてないヨォ」
ゾッドは槍を落とし両手を掲げて降参の姿勢をとる。力の入らない腕をゾッドから引きずり出し、溢れ飛び散った血が顔や服にかかる。
「潔いね。心臓を外してしまったか。楽に逝かせてあげようと思ってたんだけど」
「外れてくれたことに感謝するヨ。お互いもうヘトヘトだしさぁ、また今度遊ぼォ、ルチルレイテッド。次は負けないからネ」
「ははっ、何度やっても僕が勝つに決まってるじゃないか」
互いに力なく笑い合い、ゾッドは背を向けその場を立ち去ろうと翅を震わせる。

「次は、ないよ」

突如耳に響いた声の主を確かめるより先に、モンスターの死骸が突如炎に包まれる。出所のわからない炎は突然のことに呆気にとられているゾッドの体をも一瞬で包み込んだ。
「なっ……!?」
ゾッドの悲鳴が夜を引き裂く。独特の焦げ臭い匂いが周囲に充満し、炎に包まれたゾッドは地に落ちる。
声の主を探して辺りを見回すと、燃え盛る炎のその中から、一人の少女が現れた。
「……女王の騎士ゾッド、スズメバチ十体、沈黙」
足元まで伸びた緩いウェーブの髪。霞む視界でもわかる、金から橙色へ染まる炎の色。
「キミは……?」
白に近い銀の瞳が、地に降り立った金の瞳と合わさる。眠た気な表情をした少女はしばらくこちらを見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「……あなた、全部金色なのね」
少女はこちらの問いには答えず見たままの感想を述べる。予想外の答えに思わず足の力が抜けて膝を付けば、少女は静かに近付き屈んで目線を合わせる。
「……空から落ちた月みたい」
「美しい例えをどうも。あの炎はキミが?」
やはり答える気がないらしい少女は至近距離からじっと見つめてきて、やれやれと苦笑を漏らせばどこから取り出したのか小さなカプセルをひとつ口元に宛がわれた。
「解毒剤。飲んで」
「口移しで飲ませてくれるなら喜んで」
半分冗談のつもりで言ったのだが、少女はしばし考えカプセルを自分の口に含み躊躇うことなく口付けてきた。ひやりと柔らかい感触に驚いていると口内にカプセルが入り込み、飲み込んだのを確認すると少女は口を離した。
「……まさか本当にしてくれるとは思わなかったよ。ありがとう」
何事もなかったように少女はゆっくりと離れる。炎は灰すら残さず燃やし尽くし、勢いを弱めていく。
「僕の名はルチルレイテッドだ。よければキミの名前を教えてくれないか?」
「……レーヴァテイン」
炎を見つめていた少女は再び視線をこちらに移し、初めて問いに答えてくれた。
「レーヴァテイン。神話の炎の剣と同じだね。良い名前だ」
レーヴァテインに微笑いかけると、彼女も緩く微笑んだ。
ああよかった、笑ってくれた。そう思っているとレーヴァテインの足元で消えかけていた火が突如再び勢いを取り戻して燃え盛り、炎はそのまま彼女を飲み込んで渦を巻く。
「レーヴァテイン!」
渦巻く炎の中からレーヴァテインの「さよなら」という声が聞こえ、それを合図に炎とレーヴァテインの姿は一瞬で跡形もなく闇の中に消え去った。



「とまあこんな感じだったんだよ!」
「……で?」
早朝いきなり訪ねてきたかと思えばこちらの意見を無視して延々と話し始めた腹違いの兄に、クォーツは苛々と逆立った尻尾を揺らしていた。
「つれないなぁクォーツは。もう少し僕と運命の少女との出会いに感動してくれたっていいじゃないか」
話し終わってすっきりしたのか、話の途中からクォーツ宅に遊びにきていたプラチナのいれた緑茶を啜りルチルは満足気に一息吐く。
「プラチナのいれてくれるお茶はいつも美味だね。僕のお嫁さんにならないかい?」
「おいコラ運命の少女とやらはどうしたんだよ!」
プラチナが返答するより早く、彼女と共に途中から話に加わる形となっていたスピネルが突っ込む。
「冗談だよ冗談。可愛い顔が台無しだよスピネル。カルシウム足りてるかい?牛乳飲みたまえ」
可愛い言うな!とちゃぶ台があれば引っ繰り返していただろう勢いでスピネルは怒鳴る。怒鳴られた本人は全く意にも介さず優雅に緑茶を啜っている。
「……それから、その人とはまた会えたんですか?」
「いいや。人型のモンスターとは何度か遭遇したけれど、その子は現れなかったよ」
おずおずと聞いてくるプラチナに、ルチルは苦笑しながら肩を竦ませる。
「日頃の行いが悪いから会えないんだよ」
「そんなことはないさ。ちゃんとゴミは分別してるし他人にも優しく接しているよ僕は」
「アンタの目の前にいるオレは朝っぱらからわけわかんねえ話を延々と聞かされてすげえ迷惑してんだけど」
「……クー、キャラ変わってる」
段々と言葉遣いが悪くなっていくクォーツをスピネルが宥めにかかる。目の前でちらつかせたたいやきに兄を睨んだまま素早く食いついたクォーツを面倒臭そうにぽんぽんと撫でながら、スピネルはルチルに問う。
「大体その人とまた会ってどうするつもりなのさ。恩返しでもするわけ?」
「理由は特にないね。恩返しもいいけれど……ただ、もう一度会ってみたいだけさ」
「何それ。恋?」
スピネルのその言葉にルチルは「ああ」と妙に納得し、そうかもしれないねと楽し気に笑う。
「また、会えるといいですね」
「そうだね。きっと会えるさ。会ってみせる」
この男のしつこさを身に染みて知っているクォーツは未だ見ぬ兄の“運命の少女”に心の中でひどく同情しながら、「話し終わったならさっさと帰れ」と家から追い出すために重い腰を上げた。
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