天青石の欠片

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遠い世界の物語4

2007.02.22 遠い世界の物語
それから男は月に二、三度巫女の元へ訪れるようになりました。男は巫女が外の世界を知らないことを知ると、国一の絵師に国の風景や名所を描かせて巫女に見せ、自分が見てきた美しい景色や国の人々、民話や童話を話しました。巫女は大変喜び、いつも男の話を楽しみにしていました。
そうしていく内に二人は互いにひかれあうようになりました。
巫女が微笑むと男の頬が朱に染まり、男が巫女の細い手にそっと触れれば巫女の胸は甘い痺れに満たされました。

ある日男は意を決して巫女に愛を伝えました。
男の愛は一途でそして情熱的な彼らしい言葉で巫女の心へ伝えられました。
巫女はとても嬉しくなりましたが、自分の想いを男に告げることはできませんでした。

巫女は世界を想い世界の安定を神に祈り続けなければならない存在故に世界以外を強く想う事は許されないのです。

男は返事を急かす事無くその日は神殿を後にしました。
巫女はとてもとても悩みました。胸の辺りがもやもやとしたものでかき回されているようでした。
使命としての愛と一人の人間としての愛の狭間で巫女の心は悲鳴を上げ瞳からは涙が溢れています。
そうして巫女の心が押し潰されそうになった時、ふわりと甘い花の香が巫女を優しく包み込みました。
覚えのあるその香りを辿るように振り返れば、髪も瞳も肌も服も白く美しい人間が数歩間をあけて巫女を見つめています。

魔法使いと呼ばれるその白い人間は、巫女が神殿へ連れてこられた時から時々ふらりと外にいる守りの神官の手を擦り抜けて巫女の元を訪れてはただ何をするでもなく巫女の傍で巫女の話相手になってくれていたのです。

魔法使いは泣いている巫女の傍に寄り何故泣いているのか静かに問いました。巫女は小さな頃からの知り合いであるこの魔法使いのことを何でも話せる相手と慕っていたので、今の己の気持ちを魔法使いに全て話しました。
全てを聞いた魔法使いは宥めるようにゆっくりと巫女の背を撫で、己の望む道を進んでいいのだと囁きました。
けれどそうすれば世界が滅びます。巫女が言えば魔法使いは小さく微笑んで、私を信じなさいと告げ巫女の元を去って行きました。

一人残された巫女を、白い月の光が青の硝子天井を通して彼女を青白く照らし出していました。
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