天青石の欠片

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遠い世界の物語3

2005.08.27 遠い世界の物語
ある晴れた日のことです。
神殿の前に、10名程の兵に守られるようにして一人の男が現れました。

鮮血を固めて櫛で梳いたような真っ赤な髪。その美しい髪は陽の光に照らされると炎のようにキラキラと輝きます。
強い意志を宿したその瞳は黄金に輝き、目が合えば心を見透かされてしまいそうな、尊く気高い色をしておりました。

その男は、一国の主でした。

男がひとたび戦場へ赴けば、必ず勝利をもたらすと云われており、戦場を駆け抜ける姿はまるで紅蓮の炎が周りにあるものを全て薙ぎ払い焼き尽くしていく様を見ているようで、とても勇猛で雄雄しく、同時に恐ろしくもありました。
「この男はいつか本能に抗えず、内から国を滅ぼす」とまで噂されておりました。

けれど、それも今となっては昔のことです。

民の信頼厚く、民のために善政を布き、かつては荒れ果てていたその国は男の手によって見る見るうちに豊かになりました。


しばらくして、政務にも心にも少しの余裕ができた頃、ふと、男は「神殿の巫女に逢って話をしたい」と言い出したのです。
巫女に面会できる者はごく少数に限られていましたが、男は王という立場であったため、その少数の内の一人になる事ができました。


男は神殿の外に兵を待機させ、胸元に神殿の入殿許可紋章の彫られた石を下げ、神殿の中央に座す巫女にゆっくりと近づきました。


「…お待ちしておりました」

ちょこんと座っていた巫女の口から白のベールを通して、小さな鈴の音のような声が零れます。霞んでいてもわかるその可愛らしい顔はゆるやかな笑みを湛えて、綺麗な青の瞳が男を見つめています。

「遠いところをわざわざお越し頂き、大変嬉しく思います。何もありませんが、どうぞごゆるりと…」


男は、自分の胸が少し高鳴っていることに気づきました。
その原因が巫女に対する興味からなのか、巫女に恋をしてしまったからなのか、男にはまだわかりませんでした。
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遠い世界の物語2

2005.08.18 遠い世界の物語
神殿がひとつありました。

円柱形に組み立てられた白石の壁は、夏の雲を冬の雪を固めたような純白でした。
ドーム状の天井を形作るのは美しい模様が彫り込まれた青に透く石。柔らかな陽に当たればそれはキラキラと辺りに青の光を降り注ぎ、強い日差しに当たればそれは天に向かい地平線に向かい、蒼の光を放ち、天から雨が滴り落ちてくればその雫をも青に染め上げてしまいそうな程、鮮烈で儚い青でした。

まるで巨大な鳥籠を思わせるその神殿の主は、ひとりの巫女でした。

この国…世界の掟により、たったひとりでずっと、神に祈りを捧げる為にその神殿に存在(お)りました。

巫女はこの世に生まれ落ちた時には既にその背に一対の小さな翼を背負っておりました。
この世界では、翼を持って生まれた者は天上におられる偉大な神へ、その身が神の御許に引き上げられるまで、世界の安定、平和、豊穣を祈らねばなりません。

巫女は生まれてすぐに神と巫女を崇拝する者達の手によって両親から引き離され、そして今まで神に祈りを捧げるためだけに生きてきました。

巫女もそれは当然のことだと思っておりました。
自分がいなければこの世界は崩壊してしまう。
世界が崩壊すればたくさんの人間が死ぬ。
それはとてもとても恐ろしいことなのだと、ずっと教え込まれていたのです。

巫女は、これからもずっとこの身が朽ちる時まで祈りを捧げる事を、逢った事もない、声を聞いた事もない、存在しているのかどうかもわからない天上におられる我等が聖なる父に誓いました。
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遠い世界の物語1

2005.08.18 遠い世界の物語
昔々のお話です。


今は巨大な樹が聳え立つその場所に、神殿がありました。
世界に類を見ない、とてもとても美しい神殿でした。

ですが神殿は、ある日突然崩壊しました。
理由はわかりません。
天変地異か、或いは人為的なことか、今は誰もわかりません。


唯一人

白銀の魔法使いと呼ばれる者を除いては―――――……
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